君とみた桜

「母さん、帰ったよ。」

店を覗いても…客さえいない。増してや母さんも…。
「母さん?!母さん?!」
あわてて中へ入る。
「母さん!」
戸を思い切り開けると、布団に横たわる母さんと、近所のお末ちゃんと、お末ちゃんのお母さんがいた。
「あぁ…桜雪ちゃん…」
「さっ…ゆき…ちゃんのお母さん…さっき、血を吐いて…」
突然の言葉に耳を疑う。
「労咳…ですか…」

私は母さんを見ながらつぶやいた。
ビックリはしなかった。一週間前。台所で血が落ちているのを発見した。
日に日に咳をます母さんに、昨日、「明後日、お医者様にいこう?ね?」
「ええ…。心配かけて…ごめんなさいね。」
そんな会話をしたばかりだったのに…。

「母さんごめんなさい…。明後日なんて…。昨日、行けばヨカッたのよね。」

母さんは返事をしなかった。
むしろ返事を拒んだ。