「そうやって心臓が止まるまで、弾き続けようって。」

シオンは静かに言う。

「本当にそう思ってた。ちょっと前まではね。」

シオンはまた笑う。

「思ってた…?今は…?違うのか?」

シオンは俺をじっと見た。

「僕ね、おじいちゃんに逢えなかったでしょ。」

頷くと、シオンは俺に鞄を取って欲しいと言った。

病室の端に置かれた、シオンのバックを渡す。

がさがさと何かを取り出した。

「これ、おじいちゃんの遺品。」

「え…?」

「『cafe♪』の坂の下のおばあさんが、僕が孫だって言ったら、預かってた遺品をくれたんだ。」

それは、小さな箱だったが、箱には『愛するジーンへ』と書いてあった。

「おじいちゃん、やっぱりおばあちゃんのこと、ずっと愛してたんだなぁって。」

ふふっと笑い、箱を開ける。

そこには何通もの手紙と、店に飾ってあったジーンさんの写真立てが入っていた。