「あそこが、本堂です。私はいったことはないのですが、なんだか立派ですよね」


「ほぉ、確かに。なんなら行ってみるかい?」


「いえ、私はそれより庭に行きたいです。伊藤さん、ここにある庭はとても整備されていて綺麗なんですよ。お坊さんたちがとても手入れに時間をかけているのだとわかります」


「なるほど?しかし、それを感じる事のできる君もまた美しい心を持っているからこそ。未来の女子も侮れまい」


「そ、そんなことは――……」


「おや、嬉しかったら素直に喜べばいい。もちろん笑顔で」


「えへへ」


ゆったりと、大人っぽい笑みを浮かべながら言う伊藤さんに、私はつい照れ笑いをする。

そんな案内役の途中、私達はUターンしながら恋人のような会話をしていることは自覚している。

思うに、伊藤さんは真顔でクッサイ台詞を言ってのけるタイプなんだろう。

それに紳士的で、顔もそれなりに。

いや、って言うか歴史の教科書に乗っている写真でさえ決まってるなぁなんて思えるくらいなのだから、実物が微妙な訳がない。

つまりアレです、――……きっと、伊藤さんはモテるタイプだろうなぁ、と思う。