チラリと、私は高杉さん達を見る。

まだ朝食は残っていると言うのに箸を置き、ギャアギャアと言い合いをする様はまるで子供のようだ。


「――………確かにそうですよね。じゃあ、私もお散歩しようかな」


苦笑混じりにそう言えば、伊藤はニッコリと笑って頷いた。


「それがいい。それと是非、この功山寺を案内してほしいのだ、なかなか1日では覚えられなくてね」


「あぁ、私で良ければ勿論……って言っても、高杉さん達ほど隅々までは知らないですけれども」


この功山寺はなかなかの広さで、私のようなただの娘では数週間住み込んだくらいでの場所の把握は難しいと思う。

と、私は思い込んでいる。

何せ、危険な事がないようにと高杉さんが行く先々を制限するものだから。


「いやいや、とても助かる。とは言うものの、私とてすぐにここから去る事になるがねぇ」


「あ、確かにそうですよね。伊藤さんも高杉さんと一緒に……?」


「あぁ、そうだよ」


そんな他愛のない話をしながら、食事をしていた広間から遠ざかる。

まだ私達が抜け出した事に気付かない高杉さんの言い合いをする声が寂しかったり――……し、しませんからね。