「……………」


「……………」


そうして、黙りこくってしまうのは仕方ない。

だって、ほら、私、……高杉さんにキス、されて……。

ちらりと高杉さんを見てみる。


「………っ」


バチンと視線があってしまって、咄嗟にそらした。

やだ、我ながらあからさま過ぎた。

頬に熱が登るのを感じて、恥ずかしさに視線は部屋の隅へと移る。

けれども、すぐにヒヤリとした冷たい感触がしてパッと高杉さんを見てしまった。


「……単純」


「うるさいです」


「ンな意識するこたねぇじゃねぇか、え?朔」


「う、うるさいです」


なんだよもう、さっきまで一緒に黙りこくっていたくせに私の反応を見てはクスクスと笑う。

なんだかんだ、この人は余裕で私がいっぱいいっぱいになっていることを飛び越えてしまうんだ。


……たとえそれが、どんなに辛いことだろうと。

一人で。

一人で、乗り越えちゃうんだ。


「お、なんだ。百面相じゃねぇか、器用なもんだ」


知らず知らずのうちに、ムスッと表情に出ていたらしい。

だって、思い出しちゃったんだ。


あの日、血だらけになったあの日、………高杉さんは苦しそうに咳をしていた。

どうしたってあの咳がただの咳に思えなくて、一度考えたら不安ばかりが積もってしまって。