不意に、うすぼんやりとした風景が開いた。

身体が熱い。

背中が痛い。


「たかすぎ、さん」


視界にはとても苦しそうに歪んだ高杉さんの顔が、私の顔を覗き込んでいるのが映った。

私と目が合えば小さく目を見開いて、でもすぐにしかめたように眉を寄せてしまう。


ふと、辺りが陰ったような気がした――……のは、高杉さんが私の額に手を当てたからで。

そこから、一肌の温もりが広がり、それは共に私に安心を与えてくれた。


「たかすぎ、さ、ん、」


「あぁ」


「たかすぎ……さ、」


「わかった、わかったから。ちょっと黙っとけ」


私の熱を確かめていたのだろうか、そう言えば確かに体は熱を帯びている。

ため息を吐き出せば、高杉さんは私の前髪をかきあげるようにして頭を撫でてくれた。


私は大人しく黙って高杉さんを見る。


「良かった。目を開けてくれて、良かった」


少し声が震えているのがわかる。


「もう、二度と……あんな目にゃ遭わせねぇから、だから、どこにも行くな」


くしゃりと、撫でてくれていた手が髪を握った。

それがまた、心地良いもんだから私は目を細める。


すると、目尻から何かが零れて伝うのがわかった。


「こわかった」


「あぁ」