そこから、高杉さんを待っていたがとてもとても長く感じた。


……はやく。


はやく時よ進め、高杉さんを危険に晒している時間なんて早く終わればいい。


どうしても震えてしまう手を抱えて、私は木陰にかがみこむ。

その時だった。


「誰かいるのか!」


いきなり、背後から男の人の声が聞こえてくる。

はっとして息を呑み、それが誰だか見極めようと耳を済ました。


「どこの手の者だ?もしや間諜か?……答えろ、そこにいることはわかっている」


怖い。

どうしよう。

ガサガサと葉っぱの音がこちらへと近づいて来るのがわかった。


ちらちらと篝火らしきものの光が辺りに広がって、私の目の前には自分自身の影が出来ていた。


――……ヤバい!

気付けば足が動き出して、逃げ出していた。


「待て!」


当然、相手も私を追ってくる。

誰か。

誰か助けて!


しかし、男の人の足に女の足が通用するはずもなく、私はあえなく捕まってしまう。


ぎりりと手首を掴まれて、ぐいと引っ張られた。

その痛みに無意識のうちに顔は歪み、それが男の前にさらされた。


「……お前」


至近距離。

いくら暗がりで、照らす光が篝火しかなかったとしても、相手の顔くらいは見えた。