高杉さんは私に頭を下げた。

一つの団体のトップに立つものとしては、一庶民、むしろそれ以下でもおかしくない居候の身である私に、頭をさげてお願いしたんだ。


『頼む』そう言った高杉さんの声は、頭を私なんかに下げたことをなにも後悔などしていないようだった。

答えはもう決まっている。

どんな内容だろうと、私が高杉さんのお役にたてるならば引き受けようと説明を受ける前から決めていた。


内容は、確かに高杉さんが私に頼むのを躊躇うくらいには危ない内容だろう。

けれども。

高杉さんのお役に立ちたい、ただそれだけの気持ちを持って、誠意を込め私も頭を下げた。


『承知しました、高杉さん。どうぞよろしく』


そうして、事は成立する。

大丈夫。

どんなに危険だろうと、高杉さんが守ってくれる。

伊藤さんだっている。

それに、私はこのクーデターを出来るだけ血を流さないようにするために、この仕事を頼まれたのだから。

きっと成し遂げて見せる、そう心の中で決めた。


「長州の者!――……門を開けよ、我は高杉だ!」


私の乗る馬の手綱を持つ高杉さんが声を張り上げ、私はいっそう気を引き締める――……失敗は許されない。

私が許さない。