「――……え?なん、……なんですって?」


夜。

隊士の皆さんにお握りを配りながら高杉さんの言葉を聞いていれば、その内容に驚いた。

ピタ、と高杉さんを見て離さない私に、苦笑が返ってくる。


「だからよぉ、お前、あれ着てけよ」


そう言って指差すのは、とてもきらびやかな着物だ。


「や、や、やです」


「オイ」


かぶりを振ってそれを拒む私に、高杉さんはニッコリ笑んだ。

うわぁ、なんて嫌な笑顔。


「決定事項なんだよ。お前、ただ着いてくるだけのつもりだったか、ん?」


「いえ、そんなつもりは」


毛頭、ない。

そう言おうとする前に、高杉さんは踵を返した。

そして、向かうは着物。

なるほど、私には拒否権が元々なかったようです……。


「いいか、お前」


「はい……」


「幸いなことに、出発までまだまだ時間がある。それまで、たっぷり教えてやるよ」


わざわざ「たっぷり」って単語を強めに言う。

あー、聞きたくないような聞きたいような、むしろ聞くべきなんだろうけども現実から目を反らしていたいような……。

とても微妙な心情で高杉さんを見ていれば、ポン、と肩に誰かの手が乗った。


「諦めたまえ、朔君。高杉君はあれで真剣だ」