立ち話は出来ないから、家に入るね?

 そう星羅に言われて、わたし。

 抱き上げられたままの星羅の胸に、自分からすがっちゃった。

 だって!

「ヤダ!
 家には、まだ、お化けがいるんだもん!」

 今、わたしの側には、星羅と、お父さんと、賢介の三人がいる。

 ま、まあ、賢介はともかく。

 星羅とお父さんは『セイラムド・フォン・ゼギアスフェル(世界を滅ぼす覇王の剣)』だの『フルメタル・ファング(鋼(はがね)の牙)』って言うとんでもなく強そうな名前を持つヒトビトで。

 実際お父さんは、キングタムリゾートのホテルにやって来た強盗も捕まえたこともある強者だ。

 普段は、どーでも。

 いざ、となったらその名に負けず。

 とても、頼りになることは、わかってるんだけど。

 それでも。

 デッキブラシが勝手に踊り出し。

 洗濯籠が空を舞うような家に、帰りたくなんてなかった。

「「……お化け?」」

 お父さんと首を傾げる星羅に、お風呂場で見たことを話すと。

 これまた、二人で同時にため息をついた。