はだかの王子さま


「きゃーーっっ!」

 ど、どうやらわたしが浮いたのは、お化けでも幽霊でもなく。

 後ろから近づいた星羅にひょい、とお姫様抱っこされたみたいだ。

 この状況に、パニックになってわたしは、叫ぶ。

「な、なんで!」

 忙しいはずなのに、こんな所に居るの!

「ど、どうして!」

 わたしを抱っこなんかするの!!

 声は全部言葉になんてならなかったけれども。

 星羅は大体察して頬を膨らませた。

「だって、声をかけても真衣、気がついてくれないんだもん」

 そう言う星羅に見つめられ、また別な意味での悲鳴が出そうになった。

「……と、とりあえず降ろして?」

「ヤダ」

 わたしのお願いをあっさり却下して、星羅はそのまま、もっと強く抱きしめた。

「だって、真衣、裸足じゃないか!」

 そんな風に、泣きそうに叫んで、星羅はわたしを抱きしめたまま、横を向いた。

 そして、今まで聞いたことのないほど、低い声を出した。

「……こんなことにならないように、僕はお前に頼んだんだけど?」