はだかの王子さま

 どうして、もう決まったこと、みたいに変なコトを言うわけ?

 わたしの気持ちは、どうなるのよ……!

 言いたいことは一杯あるのに、何も言えず。

 何かに導かれるように、賢介の言葉に『うん』とうなづいている自分を発見して、とても怖くなった。

 なによこれ!

 いつもの教室の、自分の席に座るっていう慣れた世界のはずなのに。

 いきなりワケ判らない場所に連れて来られた、みたいですごく不安だった。

 自分が、自分じゃないような変な感覚が、とても怖くて涙が出て来そうになった時。

 元気な声が、わたしたちの間に割って入ってくれた。

「まあ、あんたたち~~
 こんな教室で、デートの約束なんて!
 やっぱり、本当はらぶらぶなのね♪」

 み……美有希だ~~

 真衣と守野君が『そう』なんてあたし、ちっとも知らなかったわ。なんて。

 彼女のとっても元気な声は。

 賢介の揺らめくような声を打ち破り、ぱちん、と現実に戻してくれた。

「え~~ん~~! ちがうよ~~
 賢介、ただの幼なじみだもん!
 でも、何だか怖いよ~~
 やっぱり、美有希、そばにいて~~!」

 急に自由になったわたしが、最初にやったことは、まず。

 美有希に抱きつく事だった。

 なんか、とってもいい匂い!

 ふわん、と香る石鹸の香りがお母さん、みたいだ。