はだかの王子さま

 漫画化した猫みたいに、ごわごわ毛皮でどれくらい酷いのかよく判らないけど、あちこち血が出て。

 持って振りまわされたのか、尻尾がちぎれかけてる。

 でっかい目の辺りも殴られたみたいで、閉じることも開くこともでき無くて、半目で開いていた。

『なんで、こんなぼろぼろに……!』

 ゴブリンをぎゅっと抱きしめたわたしに、王さまは、言った。

『なに、知ってることを話さなかったので、少々、な。
 しかし、こヤツ。
 いくら痛めつけても、口が堅くての。
 我としたことが、少しやりすぎてしもうたよ。
 これなら、先に、仲間の白ねずみを痛めつけておけばよかった。
 しかし、聞いて驚いたぞ』

 白ねずみって、きっと、砂糖壺さんだ!

 デッキブラシ君、砂糖壺さんがやられるまで、頑張って黙っててくれたんだ。

『前王を殺したのは、ゼギアスフェルでなく。フルメタル・ファングだった』

 ……って言うコトを!

 王さまは、もう一匹のゴブリンもこちらに蹴り飛ばして言った。

『この二匹から聞いた『真実』とやらと。
 我がもともと知っていた事実を組み合わせると、実に面白い事件のあらましとやらが出て来た』

 王さまは、星羅とお父さんを見下した、イヤな目つきで眺めると言った。

『ことは、十六年前にさかのぽる。
 前王夫妻に、世継ぎの娘が生まれた……が。
 その赤子は、産まれて一年とたたずして『病死』した、と発表された。
 粛々と国葬まで執り行われ、ビッグワールドの国民全員が、一年間の喪(も)にも服したが、実際の所、その娘は生きていた』

 なぜなら……と言いつつ、王さまはわたしを見た。

『前王夫妻の娘は『病死』でなく『暗殺』されるはずだったからだ』

 その、前王の娘って、わたし、だ。

 王の言葉に、わたしの胸が、どきん、と鳴り。

 震えだした身体を、美有希が、ぎゅっと抱きしめてくれた。

『グラウェの神官長他、ビッグワールド最高位の預言者十人が全員揃って。
 娘が、いずれ覇王として目覚め、世界を滅ぼす、と予見した。
 預言者十一人全員の意見が具体的にまとまったことは、いまだかつてなく。
 前王と、神官長が、覇王の目覚め、ひいては世界の破滅を阻止すべく娘の暗殺を決意した。
 ……が。
 ここで、娘の命を惜しんだ者がいた。
 前王、王妃だ』

 わたしの……お母さん、だ……!