そんなコトをいう王さまを、星羅はぎりっと睨んだ。

『それで、ご自分が主人公の正義王だと?
 ふざけるな!
 あなたには正義も信念もなく、ただ、ヒトの恋路を邪魔する哀れな道化師でしかない』

 さっさと出ていけ、と低く言葉を紡いだ星羅に、王さまはひゅっと目を細めた。

『道化師、とはずいぶんな言い草だな。
 だが、我がそうなら、そなたの横に居る男は、なんだ。
 あかの他人でありながら、ヴェリネルラの父親を名乗って、彼女の一番近くに紛れ込んだかと思うと。
 虎視耽々(こしたんたん)と、ヴェリネルラを永遠に、自分のものにする機会をうかがっていた、その、男は?』

『それは、フルメタル・ファングの事を言っているのか?』

 固い星羅の声に、王さまは他に誰が居るのだ、と笑った。

『フルメタル・ファングは、全てを知っていたのだぞ?
 いいや、それだけでなく。
 今回の騒ぎの、真の張本人であり。
 辛くも不発に終わったが、場合によっては、もっと凄惨な出来事を引き起こしていたのだ。
 全ては、ヴェリネルラを我が手に入れるために』

『まさか、お父さんが、そんなこと……』

 今までお父さんと一緒に暮らしてみて、世間一般と違う所はそんなにない。

 せいぜい年齢不詳でイケメンな所と、わたしをあんまり怒らないこと。

 あとはご飯を作ってくれるぐらいで、変なことなんて、ないはずだった。

 それに、そもそも今回の騒ぎは、わたしの中の覇王の復活が、原因だったはず。

 そんなわたしの言葉を、王さまはさえぎるように、まるで水に濡れた犬が、毛皮を乾かす時みたいに、ぶるるっと身をふるわせた。

 すると。

 狼の王さまの鬣((たてがみ)首の周りでふさふさとしている長い毛)の間に挟まっていたらしい羽毛が二つ。

 少しの間、ホコリみたいに、ふわふわと漂ったかと思うと、いきなり、重さのあるゴブリン二匹に変わり、どんっ、どんっ、と地面に叩きつけられたのが見えた。

 どうやら、二匹とも、王さまに羽毛の姿に変えられて、連れてこられたみたい。

 ここに来るまでに、何かあったのか、すごく傷だらけのそのコ達は、見覚えのある……!

『デッキブラシ君! ウサギ耳さん!』