『王よ! あなたは、一体どこから入って来た……!』

 現王の姿を確認したとたん。

 星羅がわたしを庇って、王さまの前に割って入った。

 腰に下げた剣を楽に持ち。

 いつでも抜刀出来(ぬけ)る戦闘態勢に入ってる様子を見て、わたしは血の気が引いた。

『待って、てば!
 王さま入って来ても大丈夫、だよ。
 だって、今はわたし、そんなに……キレイじゃないもの。
 きっと、王さまはもう、わたしなんて、気にも留めないわ』

 とびきりキレイな、金髪の自分の姿が全く惜しくないって言えばウソになる。

 でも、王さまが、横やりを入れて来た主な原因ってそれでしょう?

 王さまが、キレイなわたしにつきまとってくるって言うのなら、元の姿が百倍良かった。

 覇王の力を封じられ。

 金髪のお人形さんみたいな外見が変わったら。

 外見にこだわる王さまは、わたしなんて、見向きもしないだろう。

 そう思って言ったら、王さまは、狼の顔のまま、にこっと笑った。

『そうでもないぞ、我が愛しのヴェリネルラ。
 そなたのことは、性根も気に入った、と伝えてなかったか?
 確かに外見は多少変わったようだが、なに、気にせぬよ。
 派手な衣装から、少々地味で簡素な服に着替えたようなものではないか。
 これは、これで趣(おもむき)があっていい』

 趣(おもむき)ってなによ!

 ヒトをどっかの湯呑み茶碗みたいな言い方して!

 それに……それに。

 なんで、外見ばかりを気にする、見栄っ張りな王さまが、星羅と同じようなコト、言うのよ!!

 イヤな予感がしたのは、わたしばかりじゃなかったみたい。

 美有希が、たたた、と駆け寄るとわたしの手をぎゅっと握りしめ。

 すっと無表情になったハンドと賢介が、わたしと美有希の両側を固め。

 眉間にしわを寄せたお父さんが、星羅と肩を並べて、王さまの前に立てば。

 王さまは、ふふふん、と鼻を鳴らした。

『まるで、お伽噺(おとぎばなし)の一場面のようではないか。
 悪い魔法使い達に捕えられた姫君を救うために、ただ一騎。
 敵の地下牢に乗り込んで来た、正義王という?』