「……ごめんね? 真衣。
 体調、悪いの知ってたし。
 ……本当は、キスだけのつもりだつたのに、止められなかった」

 突然だったから、怖かったんじゃないかって。

 狼の耳をぴこっと下げて、落ち込む星羅の金色の毛皮を、わたしは、ぽふっと抱きしめた。

「……怖くなんて無かったよ。
 だって、本物の星羅、だもん」

 正直なところ、あまりに夢中で……気持ち良すぎて、キスから先、ほとんど覚えてない。

 ちょっと言えない所が痛くて、腰が変じゃなかったら夢かと思ったくらいだ。

 それと。

 いつの間にか窓が開いてて、部屋を飾っていた花瓶だとか、お花だとか。絵だとか。

 ベッドと、クローゼット以外の家具や調度品がほとんど全て無くなり。

 このゲストルームが、いきなり殺風景になったことを見ると。

 ウチのゴブリンさんたち、気を効かせて……か。

 もしくは、見ていられなくて、全員部屋から逃げ出して行ったらしい。

 ……って、ソレ、いつからだろう!?

 深く考えると、また気が遠くなりそうだった。

「真衣?」

「大丈夫だってば。
 誰も、なにも見てないし」

 ……うん。

 そう言うコトにしておこう。

 それに。

「……星羅のことが、とても好き、だから」

 はだか、とか、そう言うコトじゃない。

 別の恥ずかしさに、ぽふっと、星羅の毛皮に顔をうずめれば。

 星羅は『うー』と、低くうなった。

「真衣をもう一度抱きたくなった。
 ……ヒューマン・アウトして……人間の姿になって」

「……人間の星羅は、とても素敵だけど、今、もう一度同じことをされたら壊れて死にそう」

 ……多分。

 星羅の熱に焼け焦げちゃう。

 そう、小さくささやけば、星羅は獣のまま、ヒトにはならず、わたしの頬をぺろっとなめた。

 さすがに、今日は、これ以上、真衣に負担をかけられないよなぁ、なんて。

 狼の瞳が、片方だけ閉じて、ウィンクになる。

「……ねぇ、真衣。
 これからは……ずっと僕と一緒に暮らさない?」

「……え?」

 思いがけない星羅からの言葉に、わたしは思わず目を見開いた。