「ねぇ、星羅。
 なんだか、ありえないコトが、多くない?」

「そうだね、真衣」

 王さまと、その取り巻きの従者さんたちを、ビッグワールドに置いてけぼりにした朝。

 夜が明け。

 フェアリーランドの開園直前に控えた『今』に至って、普通じゃない……信じられないコトの連続に、ため息をつけば。

 星羅は『なりゆき?』と首を傾げた。





 ……って!

「それで片付けちゃって良いの!?」

 わたしは、ベッドから、がばっと跳ね起き……そのまま。

 へたへたとベッドの中へ、逆戻りした。

「あ、ダメだよ真衣。
 まだ君は、食事がとれてないんだから」

「……うう」

 そう。

 まず第一は、これ。

 あれから、王さまと別れて、本物の星羅とずっと一緒なんだもん。

 気分が変わって、なんか食べられるかな? と思ったら甘かった。

 大好物のわらび餅を、星羅にあ~~んと、口に入れてもらってもやっぱり、ちっとも食べられず。

 結局、わたしまだベッドの上にいた。

 しかも。

 ありえないそのニは、このベッドのある場所!

 本当は、フェアリーランドの象徴、白薔薇宮殿の地下迷宮にある星羅の部屋か。

 もしくは、星羅の仕事場のデザイン工房の奥。

 仮眠室のベッドが良かったんだけど……。

 いろんな都合で、わたしが今いるのは、白薔薇宮殿の北塔のてっぺん。

 星羅の腹違いのお兄さん。

 あの、迷惑王さまが、最初にわたしの部屋にしてたゲストルームなんだもんっ!

 とりあえず、王さまが居なくなって良かったんだけど、なんだか微妙~~に休まらない。

 ん、で。

 あんまり休まらないのを承知で、ここに居るわけは……

 元々ウチにいたゴブリン二十匹が、他のビッグワールドのヒトたちと相性が悪くて。

 比較的いろんなヒトたちが出入りする地下迷宮に野放しにできないってことと。

 今までのありえないモノ一、ニをはるかに超えたその三のせいだった。

「本っ当に、信じられないよね。
 フツー、別世界への扉ってさ。
 目立たないように、こっそり存在してるモノなんじゃないの!?」