はだかの王子さま

 お父さんは、一瞬も立ち止まることなく。

 それどころか、ちゃんと斬れたかも、確認することもなく。

 そのままの勢いで、ビッグワールドへの扉を越えた。

 高々と跳躍して、パレードの列に突っ込んで来る。

 その様子に、王さまが吼えた。

『来るか、フルメタル・ファング!!』

 ところが、だった。

 お父さんは、わたしたちの乗る馬車の方には、来なかった。

 扉を越え。

 ビッグワールドに入った途端。

 再び、大きく跳躍したかと思うと。

 パレードの列を離れて、大きく右に寄り、あっという間に草の生い茂った森の中へ消えて行ったんだ。

『……フルメタル・ファングさま。
 覇王の森にて……ロスト(行方不明)?』

『そんなこと、見れば判る!』

 首を傾げながら報告する侍従を、王さまが睨めば。

 ビッグワールドの方から王さまを迎えに来た騎士の一人が、わたしたちの馬車に馬を並べて一礼した。

『ここ、三日。
 森の奥にある覇王の遺体を祀った御堂が輝いていると、グラウェの神官が申しております!
 もしかしたら、覇王復活の兆しでは、ないかと!
 ファングは、それを確認に行ったのかもしれません!』

 覇王復活!?

 わたしたちの世界とビッグワールド全ての生き物たちの王で、世界滅ぼすって言う、あの『覇王』が!?

 そういえば、魔剣0が、お父さんがその覇王かもしれないって言ってたよ……ね?

 しかも、その覇王の御堂って言うヤツが、光ったのは。

 お父さんが、星羅の姿を手に入れ、変なことを始めた時だ。

 やっぱり……お父さんが、覇王として復活するんだ。

 世界を滅ぼす王として、最初にやることが……もしかして。

 本当なら、フェアリーランドの休園日を無理やり開けて、人を集めること!?

 一体、何をするって言うんだろう!?

 嫌な予感に思わず震えれば。

 今度は、パレードの後ろの方から、焦げ臭いにおいが、漂って来た。

『王よ!
 と……扉が!!!』

 侍従たちの悲鳴に、今入って来たフェアリーランドの大扉の方を眺めれば……!



 燃えている。



 わたしたちの世界とビッグワールドを繋ぐ大扉が、大きな火と煙りを沢山出して、炎上していたんだ。