はだかの王子さま

 それは、ビッグワールドのヒトビトが、その姿を変える時に輝いた光と似てる。

 きっと、世界を繋げるために使われた、魔法の力で輝いているんだ。

 それに、向こう側のこちら側には、時間のズレがあるようだった。

 扉が全部開ききり、眩し過ぎる光がおさまったとき。

 大きな扉の向こうは真昼のように明るく。

 こちらからでは空が見えないほど高い山々が遠くに連なる、草原が見えた。

 その光景に。

 パレードに参加した『許されたヒトビト』は、みんな歓声を上げた。





『『『ビッグ・ワールドだ!!!!』』』



 この大扉が、一年に一度開くというのなら。

 出入りが比較的自由な王さまと門番のフルメタル家以外。少なくても一年間は、故郷から離れているって言うことだよね?

 みんな相当懐かしかったんだろう。

 パレードの時には、きちんと並んでいたはずのヒトビトは、列をくずして扉の向こうにビッグワールドにおしかける。


 ……寸前。

 王さまは、扉の縁の飾りから手を放し、びゅっと振って、余計な血を落とすと、扉の真ん中まですたすたと歩いて来た。

 そして血まみれの手を高々と上げて、吼えた。

『ビッグワールドへ帰りたい者は、元通りに並べ!
 我がヴェリネルラの前で、美しく整列できぬ者は故郷を目の前にしても、帰さぬからそう思え!』

 なんて。

 そんな命令一発。

 王さまの一言で、ソドニを先頭にしたパレードの列は、元通りになり。

 ソドニを先頭に、扉に向かってまたゆっくりと動き出す。

 それを、満足そうに眺めて、王さまは、また馬車に乗り込んできた。

『ふふん。どうだ? 見たか、我の統率力!!』

 なんて、自分で傷つけた左手を侍従に手当てさせながら、子どもみたいに胸を張ったけれど。

 わたしは。それどころじゃ無かった。

 だって、扉は開き、王さまは馬車に戻ったのに!

 星羅がまだ、扉の縁に、手の甲を杭のようなステッキに穿たれた、ままだったから!

『お願い!
 王さま! 星羅を助けて!』

 そう、頼んだわたしを見て、王さまの目が、細くなった。