「わたし……やっぱり、星羅がすき。
 ……星羅に人殺しなんて、絶対させたくないし。
 わたしを、王さまのモノになんてさせないで……!」

「真衣……!」

 星羅は、感情を抑えきれない様子でささやくと、そのまま、そっと、わたしをベッドに押し倒した。


 ぱふっ、と。


 自分のカラダが、ベッドに寝ころぶ軽い音を、遠くに聞いて。

 ふわっと広がる自分の長い金髪が舞うのをヒトゴトみたいに眺めてた。

 そっか。

 ……今、なんだね。

 このチャンスを逃したら、次にいつ、星羅と会えるか、判らないし。

 いつ、王さまに迫ってこられるかも、しれないし。



 きぃ……



 星羅の体重でベッドが、少しだけきしみ。

 キレイなキレイな本物の、星羅の顔が近づいてくる。

 そっか……これが、わたしのファーストキスなんだ。

 そして、きっと、続いて初体験も。

 なんて、変に冷静に考えながら。

 近づいてくる星羅の顔が、あんまりキレイで、わたしは、目を閉じた。


 ……のに。


 星羅の唇は、わたしの唇を塞がなかった。


 ちゅ


 と額に軽くくちづけて、わたしから離れてゆく……


 って!?


「……ちょっ! 星羅……!
 チャンスは、ほとんど今、しかないのに!」

 シなくていいの……!?

 驚くわたしに、星羅は、少し寂しそうに微笑んだ。

「……確かに、時間は無いんだけれど。
 泣いてる真衣は、抱けないよ」

 ……え!?

 星羅に言われて、慌ててほほに手をやれば。

 我ながら絹みたいだ、と思うすべすべお肌に、水の筋がついていた。

「なん……っ……で!?
 わたし、星羅ならいいって思ってるのに!
 全部納得してる……!!」



 ……はずだったのに。



「ごめんなさい……わたし……!」

 思わず謝るわたしに、星羅はううん、と首を振った。

「やっぱり、いきなりなんて。
 こんな風にするなんて。
 真衣にとっては良くなかったんだよ。
 ……いくらなんでも、もう少し、心の準備が欲しいよね」