そして、王さまは、こんな判りやすい策で、ゼギアスフェルに会おうと試みるなど、ヴェリネルラは、まだ子どもだなとか。

 勝手なことをつぶやいて、言葉を続けた。

『愛しいヴェリネルラ。
 そなたが、ゼギアスフェルのドレスが欲しい、と言うのなら、やろう。
 せっかくの、一年に一度の誕生日プレゼントなのだから』

 王さまは、余裕たっぷりにそうは言ったけど。

 彼の表情は、あんまり良くない。

 少し考えてから、王さまは案の定、の交換条件を出して来た。

『ゼギアスフェルが、ドレスを作る時には、我も同席する。
 もちろん、ヴェリネルラとゼギアスフェルを一瞬足りとも二人きりには出来ないからな』

 ……って、何よ!

 わたしは、少しでも長く星羅と二人になりたいのに!

 このままじゃ、王さまがずーーっとついて来て、星羅と話もできそうにない。

 そんなの絶対イヤで、わたし、思わず大声をあげてた。

『わたしは、星羅に、結婚式の衣装を作ってもらうつもりなんです!
 こちら側の習慣では、結婚式に関わる男の人が、結婚式当日より前に花嫁衣装を見ると、不幸になるって習慣があって……
 だから、ドレスを作っている時は、来ないでくださいね?』

 本当に、花嫁衣装の迷信話なんて、あるのか、知らない。

 けれども、わずかなチャンスを逃すワケになんて行かなくて。

 適当なことを言ってみたら、王さまは、目を細めた。

『おお、聞いたことがあるぞ!
 確か、結婚式に臨む新郎は、事前に花嫁衣装を見ては、いけない、と言うものだったな!?
 そうか、そうか!
 ヴェリネルラは、我を新郎と認めて、心配してくれるのだな?』

 新郎!

 王さまが!?

『違う!
 違いますって!
 新郎って、花嫁さんの相手役、でしょう?
 そんなつもりは、全くありません!』

 わたしは、慌てて訂正したけれど。

 王さまは、聞いちゃいなかった。

『ナイトウマイが、そこまで、我を思ってくれるのなら。
 そなたを信じて、ドレスを作るための時間ぐらいは、ゼギアスフェルに任せても良いかのう』