「星羅……!」

 決して乱暴に、って言うワケじゃないけれど、まるでわたしの手を振り払ったように、見えた。

 そのことが、星羅の『真実』を語っているように思えたんだ。

 パタンと閉じられたゲストルームの扉の音を聞いて……涙が出て来た。



 星羅……!



 星羅……っ!!



 あなたは、本当に、わたしの両親を……?


 実感、なんてなかった。

 だって、ついさっきまで、お父さんって言えば『内藤鋼牙』っていう、年令不詳のフェアリー・ランド遊具専門の整備士長さんだし。

 今まで『お母さん』だって教えてもらってた。

 アルバムの中にいる美人の女のヒトが『誰かに殺された』なんて、スゴいことになってるとは、誰も……誰も教えてくれなかったんだ。

 だから、星羅が両親を……って言われても急に憎むキモチも沸いて来ず。

 ただ、ただ、不安で心配で……混乱してた。

 ……星羅は、ヒトを殺したことがあるんだって。

 それは、星羅に出会ったときから本人も言っていたこと。

 ずっと、人間の姿になれなかったのも、そのせいだって知ってたけど。

 本音を言うと、まるで信じてなかったし、わたしには関係ないって思ってた。

 学校の歴史の授業で先生が言っていた。

 日本の殿さまでも。

 西洋の王さまでも。

 国を興したり、自分の血筋を守るために戦ったり、邪魔なヒトを暗殺したりすることがあるって。

 そんな、歴史の向こう側にある自分とは全く関係ない世界が、ぐいっと音を立てて近づいてくる感じが怖い。

 セイラムド・フォン・ゼギアフェル。

 海水の塊を燃やした凄まじい力を見れば、判る。

『世界を滅ぼす覇王の剣』星羅の片割れである『魔剣、0』が、本当はキャベツ切ったり、リンゴを剥いたりするための包丁じゃないように。

 星羅だって、ただのコスチューム・デザイナーさんじゃ……ない。

 彼は『覇王の剣』で『王子さま』だった。

 しかも、本物の。