はだかの王子さま

『それで、愛しいヴェリネルラ。
 そなたは、何が食べたいのだ?』

 せっかく人払いをしたはずの部屋に、メイドさんを呼びつけ、今手に入る物で、最高の食事をすぐに作って来い!

 と、命令した揚句の、その言葉に『特に何もいらない』と答えようとした時だった。

 びっくりするほど、すぐ近く。

 わたしの耳元で、誰か男のヒトの声がこっそりささやいたような気がした。

「ヴェリネルラのワインが飲みたいと、王に要求しなさい」

「……え?」

 突然聞こえた流暢な日本語に、驚いて辺りを見まわしても、それらしいひとは誰も、いない。

 も、もしかして、コレっ!

 わたしの大嫌いな、お化けとか、幽霊の類かしら……っ!?

 やだ……っ

 こわいよ~ なんて、悲鳴を上げる寸前だったわたしに、声が続けた。

「静かに。
 そして、あまりきょろきょろしないでください。
 私は、あなたの苦手な幽霊の類では、ありません。
 主の命により、あなたをここから助けに来ました。
 ……王に、唇を……操を奪われたくはないのでしょう?」

「う……うん!」

 なんか、どこかで聞いたことのあるような声だったけれど、ささやく声では良く判らず。

 その主って言う人が誰だかも知らなかった。

 でも、王さまから、絶対逃げたくて!

 逃げられるのなら、相手が大嫌いな幽霊でもいい!

 そんな思いで、うなづくわたしに、声が言った。

「ヴェリネルラのワインは、あまりに貴重でたかが侍従では、触れることすら、かないません。
 あなたが欲しい、と要求すれば、王が自ら酒を取りに出向くでしょう。
 その隙に、私と一種にこの部屋を出るんです。
 厄介なソドニが帰ってくる前に、さあ、早く!」

 わ、わかった……