はだかの王子さま

 ……と思った、寸前だった。

 助けは、来た。

 ……ただし、とても変な場所から。



 ぐぅうううう~~




 なんて。

 それは、きっと百年の恋をもブチ壊す。

 雰囲気無視の、現実的な、カラダの欲求音。

 お腹が減った~~と叫んだのは、わたしのお腹の虫っていうヤツだった。


 その、情け容赦のない、びっくりするほどの大音響に、妖しく淫らな雰囲気を纏(まと)った王さまさえも、目を見開いて、しぶしぶと、わたしの上から、どいた。

『……なるほど。
 そなたが、今一番欲しいものは、食物か』

 ちょっと呆れたような、王さまのため息に、わたしは顔から火の出るような思いだった。

 はずかしいよ……!

 星羅のために、唇を守り、そして。

 もしかしないでも、その先をする気満々だった王さまを止めることができたのは、大変よろしかったのですが……っ!

 なにも、お腹の虫が大活躍しなくてもいいじゃない!

 別な意味で涙目になったわたしに、王さまは、聞いた。

『……それで、そなたは何時(いつ)から食事を取っていないのだ?』

『えっ……と。
 昨日の……お昼、から?』

 夜は、0で剥いたリンゴを星羅と分けただけだし……騒ぎで、朝ごはんを食べ損ねた以上。

 あとは、砂糖壺さんから貰った角砂糖しか、食べてない。

 どんな状況でも、はずかしいのは、変わりなく。

 しどろもどろの説明に、王さまは眉間に深々と皺を寄せた。

『それは、もう、丸一昼夜を超えて、何も食べてないのと同じではないか……!』

 そんな事では、そなたの身体が壊れてしまう!

 なんて。

 本気で心配そうな声を出した王さまは、自分の欲望よりも、わたしのカラダの事情の方を優先した。