はだかの王子さま

『その点、我の血統は、非の打ち所がない。
 はるかに高い血が流れている。
 真にそなたにふさわしいのは、この我だ』

『べ、別にわたし!
 血統なんて関係ないもん!』

『では、その容姿か?
 確かに我の素顔は、ゼギアスフェルより劣っていることは、認めよう。
 しかし、王族には、幻影を見せる力と、それに伴う姿写しの技がある。
 フルメタル家のそれとは違い、血は要らぬ代わりに、能力の完全コピーなど出来ないが、一度覚えてしまえば、何度でも、好きな時間だけ、変化できるのだ。
 ……だから』

 そなたがゼギアスフェルの姿が気に入っていると言うのなら、と王さまは言葉を続ける。

『我もまた、そなたの前では、ずっと、ゼギアスフェルの姿を保ってやると、約束してやろう』

 そう言って王さまは、口の中で何かをつぶやいた。

 すると。

 淡い光が輝き、次の瞬間、王さまが、変わる。

 わたしの大好きな。

 でも、キレイすぎて、ちゃんと見られない星羅の姿に……!

 やだ!

 やだやだやだ!

 こんなのすごくやだ……っ!

 星の輝きのような、色とりどりのメッシュの入った、月光の金髪。

 琥珀色の瞳。

 王さまは、大好きな星羅の顔して笑う。

『どうだ?
 これなら、良かろう?』

『イヤよ!!』

 絶対、最悪に、ものすごくイヤだよ。

 わたし、星羅の全部が好きなのに!

 ヒトの姿だけ似せた、全くの他人が迫って来るなんて!

 朝、その魂が0(ゼロ)と混ざってしまった蒼のセイラの時とはちがう。

 お父さんが、星羅の姿を借りて、動きまわっている時とは、全然違う、はっきりとした嫌悪感が、王さまと一緒に迫って来た。

『イヤ! その格好で、わたしのそばに来ないで!!』

『では、どうすれば、そなたの気が引けるのだ?
 ナイトウマイ……?』