はだかの王子さま

『お……王?』

 訝しげに首をひねるソドニの背を、王さまは、笑いながらばしばし叩く。

 どうやら、笑いが止まらない……みたい。

 王さまは、息も切れ切れに言った。

『やっと……判ったぞ!』

『な、なにがですか?』

 ますます良く判らないらしいソドニの質問に、王さまはヒステリックな笑いを止めようともせずに呟いた。

『フルメタル・ファングが、我の元から去った本当の理由だ。
 ヤツは、追放されるゼギアスフェルに同情して、この世界に来て、そして留まったわけではない。
 我の推測が正しければ……それは、我の顔など見たくもなかろうな。
 しかも、ゼギアスフェルについて、この世界に留まろうとする辺り……フルメタル・ファングは、ヒトの心を弄ぶ悪魔か?
 全ては、ファングの描いたシナリオ通りに進み……我らは、ヤツの手の平の上で踊る道化に過ぎぬ……などとは!』

 王さまは、大笑いしながら言うと、ぎり、と空を睨み、低く声を出した。

『……フルメタル・ファングを連れて来い! 今、すぐにだ!』

 王さまのその声に、あたふたとソドニがうなづき、部屋を出る。

 そして、すぐ外にいた二、三人を引き連れてどこかへ行く気配がした。

 王さまは、それを見送り、メイドたちを追い出し。

 わたしの方へ向き直った。

『これで静かになった……二人きりだ。
 ナイトウマイ』

 ひとしきり笑って落ち着いたのか。

 王さまは、笑いすぎて出て来たらしい涙をぐぃ、と手の甲で拭いてゆっくりと近づき。

 わたしの手を取ると自分の頬にあてた。

 その、大笑いの末出て来た涙を拭いて、すぐの。

 しとっとした、肌の感触が気持ち悪い。

「やだ……っ」