今度は、細い空気の膜の束じゃない。

 もっと、断固として堅い空気の壁が、わたしを突き飛ばした。

「きゃ…………!」

 悲鳴を上げる余裕さえ、無く。

 わたしは、美有希達が空を飛ぶための空気の力にはじかれ、その反動を受けて、ヘリコプターが飛び交う空に高く高く投げ出された。

 まるで、子どもが飽きて放り投げた、人形のように、大きな弧を描いて、地面にたたきつけられる、寸前。

 わたしが最後に見たものは。

 散々もがいた末、ようやく。ハンドの空気の手から片方だけ自由になった腕を、必死に伸ばしている星羅の顔。

 声は聞こえなかったけれど『真衣!!』って叫んでくれている。

 わたしが世界で一番大好きなヒトの顔だった。