美有希の言葉にハンドは微妙な顔つきをして、低く声を出した。

「姫、あまりお遊びが過ぎませんように……」

 そんなハンドの言葉を美有希が笑う。

「もちろん、判ってますわ。
 だって、その子と仲良くしてたのは、ただ。
 お母さまとご結婚なさったのに、ご自分の家を顧みず。
 挙げ句の果てに、追放されたお父さまが。
 どんな子供を連れて、この世界に来たのか興味あったからだけですもの」

 美有希は、きりりと眉を寄せた。

「しかも、前王を宮殿ごと燃やし。
 自らの手で第一王位継承権を獲得した、ゼギアスフェルさまのご寵愛を一身に浴びている娘なんて!
 ご気性の荒い炎狼を骨抜きにするなんて、どんなに美しく、高貴な顔立ちをしているかと思えば、たかが、その程度。
 しかも、目を見張るほど聡明でもない
 なんで、こんな子のために!!
 お父さまが家族を捨てて、ゼギアスフェルさまが、愛するのかしら!?」

 震える声で言葉を吐き捨てると、美有希は、ハンドの胸に顔を埋めて言った。

「でも。もういいわ。
 お父さまも、ゼギアスフェルさまも、手に入れましたし。
 もう、会うこともないでしょう。
 ……ハンド、飛んで」

「はい」

 ハンドは、自分の腕の中にいる美有希に素直にうなづくと、一言だけつぶやいた。

「……風よ」

 その途端だった。