はだかの王子さま

「なんで、そんなコトを言い張れるのよ!」

 0の言葉が信じられなくて思わず大声を出せば。

 仔犬は、もったいぶるように尻尾をゆらゆらと振った。

『どんな大規模な地殻変動が起きたとしても。
 日本の何倍もある大陸が、たった一日で跡形もなく沈むのはおかしい。
 そして、何より……その時、全世界に大規模な津波の被害があった、と言う記録が一切、ないからだ』

「……えっっ? 津波……?」

 驚くわたしに、0はうなづいた。

『日本でも、大規模な地震が起きただろうが。
 アレは、地球規模で見たらそんなに大きくねぇ島国の地震で。
 列島が、わずか20センチずれただけなのに。
 20メートル超の津波が来た。
 ……なのに。
 太平洋の広大な範囲に存在していた『ムー』が。
 大西洋に存在していた『アトランティス』が、もし1日で沈んだとしたら。
 その日。
 残された、他の大陸では、何が起きたと思うんだ?
 北極の氷河が、緩やかに溶けて行くだけでも、海面が上がって南国の島が消える騒ぎになってるってぇのに。
 はるかに広く分厚い岩と土の塊が、いきなり海に沈んだら。
 押し上げられた海水は、一体、ドコに行くんだよ?』

 なのに、大陸が消えて、なお。

 他の土地がほとんど無事だったのは。

 人類が大陸を『故意に動かした』からじゃないかと、0が言う。