はだかの王子さま

『てめーの方も、ひと振りの剣になったら、今までの生活が出来なくなるんだぞ!?
 常に、覇王の側に居るから、自分のためには、何も時間を裂けない。
 今生で、未練なことはねぇのか!?
 例えば、てめー自身が王位を望むとか?
 てめーが、本物の『覇王の剣』である以上。
『覇王』本人になることはねぇ。
 だが、ビッグワールドだけを統治する王になるの可能性は、まだある。
 フルメタル・ファングが、これから覇王として目覚めること無く。
 穏やかに生きて行くなら。
 覇王は、この世に出現しねぇ。
 そんな、覇王不在の間、王族のてめーがその血統で、ビッグ・ワールドの王になれるだろ?』

「……僕は、別に王になる気も、どこかの国を統治する気もないよ。
 でも、この身に未練は、あるな」

 そう言って、星羅は、さらりと髪をかきあげると、その琥珀色の瞳で、わたしの方を見た。

「……真衣……」

 たった一言のその声が。

 とても甘く、切なく、わたしの耳に響いてく。

 そんな星羅の声につられるようにして、0の方でも、わたしを見た。

『てめーは、ヴェリネルラと共に……か』

 0は、しみじみつぶやいて、振り切るように尻尾を振った。