はだかの王子さま

『俺様は、今、フルメタル・ファングの剣だ。
 ヤツが覇王だったら、主(あるじ)の交代はない。
 しかし、万が一。
 フルメタル・ファングが覇王じゃ無ぇなら、俺様は、ヤツから引き剥がされるだろう。
 それに、フルメタル・ファングの性格からしても、ヤツが世界を滅ぼすって言う覇王を望むとは思えねぇ。
 フルメタル・ファング自身が覇王を嫌って、俺様を避けるかもしれねぇじゃねぇか!』

「……つまり、君は。
 この事態を他に黙ってる、ってこと?
 フルメタル・ファングが本当に『覇王』かどうか、確認もせずに?」

 リビングの壁にもたれ、腕組みをした星羅に、蒼銀の子犬は、悪ぃかよ! ときゃんきゃん吠えた。

『俺様は、今、生まれてから一番、幸せな時間をかみしめている最中なんだ!
 誰にも邪魔はさせねぇぜ!
 せめて、フルメタル・ファングが、寿命で穏やかに、ベッドの上で死ぬまでは。
 俺様は、覇王の剣なんぞになりたくねぇ!
 魔剣0の記憶を持ったまま。
 ヤツの腰か、キッチンの隅にいるんだ……!』

 0は、まるで、魂がちぎれそうな声で叫ぶと、星羅を睨んだ。