はだかの王子さま

 わたしの声に、星羅が静かに言った。

「……僕の名前はビッグワールド一の魔法使いが運命を読んでつけたことになっているけど……
 この世で最も強い『覇王』にあやかっているからね。
 ビッグワールドでは、珍しい名前じゃないんだよ。
 それに……」

『ヒトの姿を手に入れて、一年経ってねぇだろ?
 どいつもこいつも、コイツが『ヒト』だ、と騒ぎやがるが。
 俺様としては、コイツが不安定過ぎて、本当に『ヒト』かどうか、まだ判らなかったからだ!』

 0は、星羅のセリフを途中でもぎとると、背中を丸めて、毛皮を逆立てた。

『しかも、千年は長げーぜ!
 こんないけ好かねぇ野郎が、自分の半身だなんて、信じらんねー!
 もうすっかり別人じゃねぇか!
 これから先、てめーは、この軟弱男の記憶を抱いたまま、覇王の剣になるんだ。
 ……良かったな。
 俺様と融合出来た以上、てめーは完全に『ヒト』決定だ』

「……記憶を持ったまま、剣になる……!?
 それは、ないな。
 僕が、君と融合した時……真衣の涙が、手にかかるまで、僕は僕だってことをすっかり忘れてた……
 もし、もう一度、君と融合したら……僕は、完全に別人になってしまうかもしれない」