はだかの王子さま

 わたしは、何もできないまま。

 ただ、目の前の出来事に、声をあげてた。

「え……えっと、これは何?
 ……それとも『誰?』って聞いた方がいいのかな?」

 だって、そこには。

 一匹の小さな子犬が、目をつむり、伏せの格好で、前足に自分の頭を乗せていたんだもん。

 ふさふさの毛皮に、丸っこいしなやかな、カラダ。

 まるで、フェアリーランドのキャラクターみたい。

 ううん、ちがうか。

 フェアリーランドのキャラクターは、黒に近い銀色の毛皮だけど、この子犬は、光の角度で蒼く見える白銀色だ。

 それでも、まるでぬいぐるみみたいにかわいい、このコは一体……!

「……0(ゼロ)だよ」

 そう星羅に言われて、飛び上がりそうになった。

 この子犬ちゃんが、誰、だって……っ!?

 でも、0って『魔剣』でしょう?

 いつも見慣れているのは、菜っ切り包丁だし。

 昨日見たのは、やたら刃の幅が広い剣、でした……が?

 そもそも、こんな、子犬ちゃんの要素なんて、無いし!

 語呂合わせじゃないんだもん。

 実は『魔剣』ではなく。

『魔犬』でした、なんて言ったら、わたし怒るからねっ!