はだかの王子さま

 あれ?

 おかしいな。

 ここは、泣く所じゃないはずなのに。

 ちょっと……いや、かなり。

 変とは言え『星羅』に迫られ……戻ったんだよね?

 最初は『少し強引でも、触って欲しいな』って思ったはずなのに。

 実際に『じゃあシよ?』ってなったら、怖くて、泣いた。

 ん、で。

 星羅が元通りになって、ほっとして、更に泣く……?

 結局、なんか変とは言え。

 全~~部、自分の思い通り、のはずなのに。

 なんか、わたし。

 すごく、わがままでヤなやつみたい。

 しかも、思い出すのも、恥ずかしい!

 わたしが、変なことを考えているのがバレちゃったんだもん。

 ますます、顔が合わせられなくて。

 そんなわたしの涙なんて、星羅に見せたくなくて。

 多分、わたしの涙を拭くために、そっと伸ばして来たのだろう。

 星羅の手を、さりげなくかわし。

 ごまかすように二つに別れたもう一つを見た。

 だから。

 わたしはこのとき、気がついていたけど、何もできなかった。

 星羅が、わたしに、触れられなかった手を握りしめ。

 ひどく辛そうな顔をして、眉を寄せていたのに。

 後から思えば、このとき。

 星羅にひとこと、大好き、って言ってあげれれば、良かったのに。