「セイラなら、お前を抱きたい、なんて言わないと?
 気に入っているはずの女に手を出さねえなんて、男ならあり得ねぇぜ?
 あんた。
 セイラが……オレが。
 本当は、ナニを考えているのか、ちゃんと判っていないだろう?
『セイラ』は、そう。
 夢の世界の王子さま、だったからな」

「やめて!
 放して!!
 あなたなんて、星羅じゃない……!」

「ふん」

 蒼のセイラは、鼻で笑うと、抱きしめていたわたしの身体をふ……と緩めた。

 けれども、その隙に逃げ出すチャンスをくれずに、くるっと仰向けにひっくり返し、わたしの肩をベッドに押さえつけた。

 そして、鋭くささやく。

「良く見ろ……オレの顔を……!
 オレは、誰だ?」

 言われて、見た。

 彼の顔を見て、わたしは息を呑む。

「……星羅……!!」

 瞳が赤い。

 そして、やっぱり、うす蒼い銀色の髪。

 ありえない言い回しや言葉のセレクト。

 でも……っ!

 顔を見て、改めて。

 変なリアリティを伴って、このヒトが星羅だって、確信した。

 それは、わたしを抱きしめていた星羅の匂いだったり。

 全体的な雰囲気だったりの長く付き合って出来た『勘』っていうの?