例えば、星羅の方が『君が欲しい』とか、なんとか、言ってくれちゃって。

 強引に奪ってくれるのなら。

 わたしは喜んで、あげちゃうんだけどな。


 ……でも、ね。

 星羅は、いつも、わたしを見るたびに狼の顔でにこにこ笑うだけだから。

 甘~~い感じには、ほど遠く。

『欲しい』のなら、奪える機会は山ほどあっても手を出さないんだもん。

 わたしが一人で騒いだら、ものすごく、変、だ。

 ウワサでは、とても痛いらしい。

『初めてのソレ』を大好きな星羅に、とは言え、自分からお願いする勇気なんて、なく。

 そして、何より。

 わたしが、実は、そんなえっちなことを考えてる、ヤらしいコなんて、思われるのは、もっと、もっとイヤだった。

 けれども。

 星羅が呼吸するたびにかかる息が、クビから下の全身をしびれるように、なで上げ。

 わたしが、空気を吸うたびに膨らむ胸は、否が応でも、星羅の腕に押し付けられる。



 ……もう、イヤ……っ……!



 くらくらする。



 胸のどきどきがもっとひどくなって、壊れそうになり……


 わたしは、とうとう悲鳴をあげた。

「せ……星羅……っ!」

 わたしを放して?

 なんて。

 後に続くはずの言葉は、声にならなかった。