「う……うん」

「それに万が一。
 ファングが、覇王って形じゃなく。
 自分の上にいる王族が全て死に絶えて、王の位が舞い込んで来た形でなったとしても。
 情に流されて、多少莫迦な真似をすればって、今より悪くなることは無いさ……って、真衣。
 自分で質問したくせに、泣きそうな顔、しちゃダメだよ?」

「……でも……だって……」

 言葉に詰まったわたしの頬を、狼の星羅は、ぺろっと軽くなめて、また身を伏せた。

「大丈夫。
 僕と、フルメタル・ファングはとても長くからの友人で、性格もクセも、良く知ってる。
 本気で争うことは、まず、無いさ。
 誰も死なないし、真衣が、その手につけた傷以上の大変な怪我もないよ?
 五月一日に、二十四時間だけ向こうと、こっちがつながって。
 また、閉じて、それで終わりだよ。
 フルメタル・ファングのお仕事は、その時つながる門の開け閉めだけで、他には、何もないよ。
 大丈夫。
 今まで十回もやって来た、慣れた仕事だし、ね?」