ゲームと美緒は言った。
 割り切ったつき合いをすることが自体がゲームなのか、もしくはその結果がゲームなのか……それは坂井にはわからない。
 ただあの視線の意味に気づいたとき、一度坂井は美緒に負けている。
 無言で向けられていたあの視線は、美緒が自分の存在を坂井に知らしめるための行為。もしそのまま坂井が気づくことがなければ、美緒は坂井の前に現れることはなかっただろう。
 しかし坂井は気づいた。そして美緒もそんな坂井の様子に気づいた。
 その時点で、気づかぬうちに仕掛けられた最初のゲームは美緒の勝ち……そういうことになったのだ。
 つまり視線の存在に気づいた時点で、一度坂井は美緒に負けている。

 ならば、今度は真っ向から挑まれたこの状況で、新しいゲームを自分から仕掛けてみるのも悪くはないと思っていた。