――ゲームをしませんか?――

 どうしてその言葉に乗ってしまったのか、坂井は自分でもよくわからなかった。
 ゲーム……その言葉がどういう意味を含んでいるのか、言われた瞬間にわかっていたはずだった。
 恋愛のゲームをしようと、美緒は言ったのだ。
 生徒相手に……いったいどういうつもりだと自問自答してみたが、全ての答えは美緒のあの目の中にあった。

 挑戦的な目。
 初めてその存在に気づいたときから、坂井はあの視線の意味をわかっていたのかもしれない。
 学生時代はけっこう遊んだ方だった。一夜限りの遊びもかなりやった。坂井もそうだったように、相手も割り切った状態でつき合っていたのだから、罪悪感なんて感じたこともなかった。
 そう、坂井は昔から「情」というものはあまり感じる方ではなかった。恋愛だけではなく何に関しても、相手が真剣になればなるほど、第三者的に冷めた目で見てしまう。
 美緒はそういう坂井をわかっている。その上であんな挑発……いや、挑戦を自分にしてきたのだ。