季節は夏から秋へと色を変えていった。
 焦げ付くような熱を浴びせた季節が終わり、肌に心地よい風を纏わせる時期になった。
 美緒は、週末に月を見に行きたいと坂井へ言った。
 いつもは絶対に坂井と過ごすことのない週末。美緒はまるで何かに挑むように、その二人が交わることのない日を指定した。
 それに対し坂井は、特に何も言わないし態度を変えることはなかった。

 そして土曜日の今日。夕方に坂井の自宅近くの駅で待ち合わせをした。
 美緒が以前住んでいた団地は、電車で20分ほどの場所にある。だんだんと日が沈むのが早くなったせいか、たった20分
で外の景色がガラリと変わっていた。