いざよいの月

「月……見に行くか?」
 あおぐように空を見つめていた美緒は、信じられないような顔をして坂井の方へ振り返った。
「……え?」
「満月の日に上手く行けるかどうかはわからないけど、その昔住んでた団地に見に行ってみるか?」
 突然の言葉に、美緒は何も答えない。
「月が迷子になるって……なんか情緒あるしな。また迷子になるところ見に行かないか?」
 もう一度坂井は聞いた。