「消えたのはね、別に方向変えたからじゃないのよ。いくらなんでもまったく反対方向向いたら見えなくなるのはわかるじゃない。そうじゃなくて……本当に消えたの」
「……? どうして?」
聞き返した坂井へ向け、今度は美緒の表情が少し得意げに変わる。
その顔を見て、ここまで感情を露にして会話をするのはひょっとして初めてではないかと、坂井はそう思った。
「そのときもうかなり暗くて周りの景色がほとんどわからなくて、そのうえ月も消えちゃってすごく恐くなって走って帰ったの。そして次の日、学校帰りに同じ場所に立ってみたらね……目の前に山があったの」
「……山?」
「うん、団地の外れに小さな山……っていうか、丘がちょこっと大きくなったのがあってね、多分その後ろに隠れちゃってたの。その山、夜になると空の景色に隠れて境界線がまったくなくなっちゃうから、あのときは本当に……雲も出てないのに月が消えちゃったって思ったんだ」
「……? どうして?」
聞き返した坂井へ向け、今度は美緒の表情が少し得意げに変わる。
その顔を見て、ここまで感情を露にして会話をするのはひょっとして初めてではないかと、坂井はそう思った。
「そのときもうかなり暗くて周りの景色がほとんどわからなくて、そのうえ月も消えちゃってすごく恐くなって走って帰ったの。そして次の日、学校帰りに同じ場所に立ってみたらね……目の前に山があったの」
「……山?」
「うん、団地の外れに小さな山……っていうか、丘がちょこっと大きくなったのがあってね、多分その後ろに隠れちゃってたの。その山、夜になると空の景色に隠れて境界線がまったくなくなっちゃうから、あのときは本当に……雲も出てないのに月が消えちゃったって思ったんだ」
