「団地の建物が7棟あったんだけど、その3棟目の左側に月が出ててね、それが角を曲がったら右側に移動してるの。見る方角が変わったから当たり前なんだけど、小学校のときってそんなのわかんなから月が一瞬で動いたって思ってんだ」
「ああ、でも俺もそういうのわかるよ。カーブ曲がったら右にあった建物が左に移動してたりな」
「そうそう。で、もう一回曲がったらね、今度は目の前から月が消えちゃったの」
思い出話をしているのに、まるで今現在の出来事のように美緒の声が残念さを含んだものに変わる。それが坂井には少しおかしく、つい小さくふき出してしまった。
その姿を見て、美緒が少しばつの悪そうな顔をして、もう一度窓の方を向いた。
「ああ、でも俺もそういうのわかるよ。カーブ曲がったら右にあった建物が左に移動してたりな」
「そうそう。で、もう一回曲がったらね、今度は目の前から月が消えちゃったの」
思い出話をしているのに、まるで今現在の出来事のように美緒の声が残念さを含んだものに変わる。それが坂井には少しおかしく、つい小さくふき出してしまった。
その姿を見て、美緒が少しばつの悪そうな顔をして、もう一度窓の方を向いた。
