「夏休みはどこかへ行ったのか?」
「え? あ、うん。友達のおばあちゃんの家に泊まりに行った……かな。それくらい」
 普段とまったく変わりない会話。ごくごく当たり前の……二人のこの微妙な関係などまったく感じさせないこのような会話が、この坂井の部屋では日常的に交わされる。
 始めはこの微妙な空気にお互い探りあうような雰囲気を感じていたが、今ではもう普段の会話に対し坂井も美緒も特に何も感ていないようだ。
 教師と生徒というそれぞれの立場を持っている現実。
 そう考えればこのような関係に何も感じないこと自体がおかしい。しかし、何かをおかしいと思った瞬間……いや、それを口に出した瞬間、このゲームは終わる。
 それは互いに口にせずともわかっている……。