相変わらず学校が終わると同時に、坂井のアパートに行く生活が続いていた。
 どうしても坂井より美緒の方が早く学校から出るため、先にアパートに着いてしまう。以前はドアの前で待っていたが、一度美緒が余りの天気の良さにドアの前で居眠りをしてしまい、見かねた坂井が合鍵を作ってくれた。
 合鍵を使って部屋の中に入る。坂井の部屋は男性の部屋らしく、無駄な物がほとんどなかった。
 1DKの部屋には机とベッドと家電製品、そして壁一面を覆っているスチール製の本棚があるだけだった。本棚の中には、国内外の文学小説、最近のベストセラーに入った物や、シリーズ物のミステリーなど、所狭しとぎっしり詰め込まれている。
 美緒はまずいつもの読みかけの本を取る。そしてアパートにしては大きな出窓の前に、デスクから椅子を持って来て腰掛ける。