実際坂井は、美緒の理想通りだった。
 学校で今迄と同じように坂井に視線を注いでも、それに動じることは決してない。クラス委員という立場上、坂井と二人で話をすることがあっても、坂井の目に狼狽の影すらも浮かぶことはなかった。
 どんな行動を取ろうと、どんな風に彼を見つめようと、決して目を逸らしたりしない。ただ黙って見つめ返すだけだった。
 坂井は、美緒のゲームの相手以上でも以下でもないと、そう心得ていた。
 そして美緒も、坂井がそういう男であるということをわかっていた。
 わかっていた……はじめから。
 初めて坂井を見たときから、自分はこの男とこうなることを。
 あの最初の賭け……自分の存在を坂井に気づかせるという賭けに勝つことも。

 そしてその先に何が待っているのかも……。