「ああ……ほんとに……」
 それはよく見なければほとんどわからない傷だったが、確かにそれは美緒の白い肌よりもさらに白く残っていた。しかしその痕とクロスするように青く浮き出る血管が、傷痕よりも更に痛々しく見えた。
 間近でそれを見た坂井は、無意識のうちに傷痕を指でたどっていた。
 一瞬美緒はびくりと体を痙攣させ、坂井へと顔を向けた。
 
 二人の視線が合う。
 美緒はまっすぐに坂井の瞳を見つめ、そして坂井もそれを逸らさず受け止めた。
 そのまましばらく無言のまま見つめ合う。沈黙の中で最初に行動を起こしたのは美緒の方だった。

 静かに目を閉じた。
 暗い瞼の向こうで、微かに坂井の動きを感じる。
 それを感じ取った瞬間、唇に暖かい吐息が近づく。

 そして……意識が沈んでいく……。