冬うらら 1.5


 彼女を働かせるために、給湯器を入れたワケではないのだ。

 そうではなくて、どうしても洗い物をしないと気が済まないメイに、せめて冷たい思いをさせないで済むようにという気持ちからなのだ。

 『給湯器を入れたから、その分バカバカ働け』と、言っているワケではない。

 そんなカイトの気持ちなど知らずに。

「ほら、あったかいから…触って」

 子供のようにカイトの腕を引っ張って、指先が湯に触れるようにされる。

 彼の反応など、見えていないかのようなはしゃぎっぷりだ。

 たかが給湯器くらいで。

 こんなにも喜ぶのだ。

 カイトは、お湯の方ではなくて彼女の方を見ていた。

 もっと早くつけてやればよかったし、そんなに欲しかったならねだればよかったのだ。

 けれども、いまのメイがあんまりに嬉しそうなので、それに水を差すようなことは言えなかった。

 ただ、カイトも強い充実感があった。

 自分の甲斐性で、こんなに彼女を幸せに出来たのである。

 やっと、メイのために、自分の懐が役に立ったのだ。

 しかし、その内容が給湯器と言う、現実味溢れるものであるのだけが不満だった。

 綺麗な服とかバッグとか靴とか。

 詳しくはよく分からないが、そういう贅沢品の方が、普通の女は喜ぶものじゃないだろうか。

 カイトは、複雑な気持ちを抑えきれなかった。

「ね、あったかいでしょ?」

 ぱっと振り返った彼女の笑顔は、まるで―― 太陽のようだった。