冬うらら 1.5

□23
「おかえりなさい!」

 声のトーンが、2音くらい違った。

 ドアを開けるなり、本当に飛び込んできそうな勢いの声に、不意打ちをくらったカイトは盛大に固まってしまった。

 帰宅するまでは、昨日と同じように『本当にあいつがいるのか?』という病気にかかっていたのだが、そんなウィルスも何もかも、この一瞬で吹っ飛んでしまう。

 出迎えのメイを見ると、もう身体中から押さえきれないような笑顔で、にこにこと笑っている。

 身体中から、『嬉しい! うれしい!』というオーラがびしばしに飛んでくるのだ。

 何故、彼女がこんなにご機嫌なのか―― それについて、考えようとしたのだが。

「来て、来て!」

 カイトの腕を捕まえて、子供のようにどこかへ連れて行こうとする。そんな彼女に、まばたきをしながらもついて行った。

 一体、何があったんだ?

 そう思っている内に、彼はダイニングに到着したのだった。

 おいしそうな料理が、既にテーブルの上に用意されているのが見えたが、それは素通りだ。

 彼女は料理に見向きもせずに、調理場まで連れて行くのである。

「ほら!」

 中に入るなり、興奮さめやらぬ声をあげてカイトの注意を引く。

 指をさされた先には。

 流しの所には。

 給湯器がついていたのだ。

 あぁ。

 それで、カイトは理解した。

 今日の朝、カイトが一番最初にケイタイをかけた相手は―― ガス会社だったのだ。

 冷たい水で後かたづけをさせたくなくて、また自分が忘れたりしない内に、と思った彼は、強引に今日中の工事をねじ込んだのである。

「ね、ね…見ててね」

 メイは、ぱっとカイトから離れて袖口をまくると、給湯器のスイッチをポン、と押す。

 すると、出てきた水がみるみるお湯に変わったのが分かった。

 出てくる湯気のおかげだ。

 それに、ばしゃばしゃと手をつけながら。

「これなら、お皿100枚、200枚洗っても平気…嬉しい」

 はしゃぐような声で、彼女はそう言った。

 そうじゃねぇ!

 カイトは、ぐらっとした。