メイも、もう少し寝坊をしていいのだ。

 そして、カイトにこんな気持ちを、味わわせて欲しいのである。

 そんな時。

 階下で。

 車の音がした。

 ん?

 カイトが眉を顰めた瞬間。

 ぱちっ。

 腕の中のメイが目を覚ました。

「え…?」

 一瞬、何もかも分からなくなったかのような茶色の目が、カイトを映す。

 起き抜けによくある現象だ。

 その瞳が、ぱっと違う方を向いた。

 枕元だ。

 カイトも、つられてそっちの方に頭を動かそうとした。

 が。


「きゃー!!!!!!!!!!!!」


 腕の中のメイが、大きな悲鳴を上げたのだ。

 カイトはびくっとして、枕元を見た。

 時計だった。

 8時10分。

 シュウが―― 出かける時間だ。

 ということは、さっきの車の音は、階下の男である。

 そして、彼らはまだベッドの中にいた。

 そう。

 見事な寝坊だったのだ。

「ど、どうしよう…ええ、えっと、朝ご飯!」

 メイは起き上がるなり、ベッドから飛び出そうとした。


「きゃー!!!!!!!!!!!!」


 しかし、また悲鳴になって戻るだけだった。

 彼女は、まだ何も着ていない状態だったのだ。